来院時の状態(初回の状況)
50歳の男性が、左腰の強い痛みについて相談のため来院されました。
3日ほど前から、もともとあった慢性的な腰痛が強くなったように感じていましたが、来院前日に屈んだ際、腰を痛めたとのことでした。痛みは左腰の第4腰椎付近から脊柱の外側にかけて感じ、動いた際に「ズキッ」とするような痛みがありました。
特に低い椅子へ座ることが難しく、立っている姿勢が比較的楽な状態でした。一方で、長時間立ち続けることも難しく、仕事の会議には一人だけ立ったまま参加していました。
歩く速度も普段より遅く、通勤や移動中に周囲の人に追い抜かれることが増えるなど、仕事や日常生活に支障が出ていました。
来院の背景
仕事は管理職で、デスクワークが中心です。普段は座って過ごす時間が長い一方、運動不足を補うため、職場まで約30分歩いて通勤していました。
以前から慢性的な腰痛があり、最近では長時間の運転中にも腰の痛みを感じることが増えていました。また、年に1回ほど、ぎっくり腰のような症状を経験していたとのことです。
ただし、今回のように動くことや座ることが難しくなったのは初めてで、仕事に集中できず、業務を続けることが難しいと感じたため来院されました。医療機関は受診していませんでした。
検査・評価
初回来院時は、前屈、後屈、側屈、回旋のいずれの動作でも腰に痛みが出る状態でした。立位で股関節を曲げる動作も十分に行えず、痛みが強かったため、腰部の詳細な可動域評価は無理に実施しませんでした。
姿勢は身体の重心が前方へ偏り、前傾しやすい状態でした。しびれは確認されませんでした。
触診では腰部の緊張に加え、腸腰筋や大腿前面の硬さが目立ちました。股関節まわりや臀部、下腿の状態も含め、腰へ負担が集中しやすい身体の使い方になっていないかを確認しました。
施術方針
鍼の刺激が苦手な方だったため、刺激量に配慮しながら施術を進めました。
発症から間もなく、腰の動きによる痛みが強い状態だったため、初回から腰部へ強い刺激を加えるのではなく、まずは腰への負担を間接的に減らすことを目的としました。
特に股関節まわりの動きに関係する腸腰筋、大腿前面、臀部、下腿を優先して確認しました。腰だけを見るのではなく、股関節や下肢が動く際の負担、前方へ偏った姿勢を考慮し、身体全体のバランスを見ながら施術箇所を調整する方針としました。
施術内容
初回は、腰への負担が少ない側臥位を中心に施術しました。
大腿四頭筋、腸腰筋、ハムストリングス、腸脛靱帯周辺、大臀筋、中臀筋、小臀筋、前脛骨筋、下腿三頭筋、背部などに鍼施術を行いました。
腰部への広範囲な刺激は避け、最後に座位で状態を確認しながら、腰部へ軽い単刺を行いました。2回目も同様に鍼を中心として施術し、3回目以降は身体の状態を確認しながら、鍼と手技を組み合わせました。
施術経過
施術を進める際は、座る動作、立位の継続、歩行、腰を曲げる動作など、日常生活や仕事で気になる場面を毎回確認しました。
腰部だけでなく、股関節、大腿部、臀部、下腿の緊張や動きを確認し、その日の状態に合わせて施術箇所の優先順位と刺激量を調整しました。
3回目以降は、仕事や日常生活で必要となる動きを考慮し、腰部や股関節の可動域、前傾しやすい姿勢、慢性的な腰への負担について確認しながら施術を進めました。
セルフケア指導
痛みが強い時期は、無理にストレッチや特別な運動を行う必要はないことを伝えました。
一方で、安静にしすぎず、痛みが強く出ない範囲で歩くことや、できる範囲で普段に近い生活を続けるよう案内しました。
デスクワークや会議中は同じ姿勢を長く続けないこと、立位と座位を適度に切り替えることも伝えました。また、屈む際に腰だけを支点にせず、股関節や膝も使って身体を動かすよう説明しました。
今後の施術方針
今後は、仕事や日常生活で必要な動作を確認しながら、腰部と股関節まわりの可動域へのアプローチを行う方針です。
前方へ重心が偏りやすい姿勢では腰部に負担が集中しやすいため、股関節、臀部、背部の状態も継続して確認します。
今回の急な腰痛だけでなく、以前から続いている慢性的な腰痛や、長時間のデスクワーク、運転時の姿勢も考慮し、腰だけに負担が集中しない身体の使い方を目指して施術を進めます。