左腰〜左臀部痛を呈した50代女性に対する施術症例報告
1.症例概要
50代女性で、2026年7月から8月にかけて計4回の施術を行いました。
主訴は左腰部から左臀部にかけての疼痛で、腰部前屈および股関節屈曲動作時に疼痛が増強していました。初回来院時の疼痛はVAS7でした。
受傷機転として、ライブでのスタンディング後、自宅でくしゃみをした際に腰部痛が出現しました。以前から慢性的な腰部のだるさがあり、また前年にも自転車を引っ張った際にぎっくり腰を経験していました。その際は整形外科を受診し、湿布と鎮痛薬による対応を受けていました。
前回のぎっくり腰の際の対応に納得できず、今回は異なるアプローチを受けたいとの希望から来院されました。
2.初回来院時の評価
初回来院時は腰部痛が強く、身体の状態を詳細に確認することが困難でした。そのため、安全性に配慮しながら、可能な範囲で身体の状態を確認しました。
痺れの訴えはなく、触圧覚にも明らかな問題はありませんでした。
腰部前屈および後屈では、疼痛に対する恐怖感が強く、十分な範囲での動作確認は困難でした。また、立位で腰部を右回旋した際に腰部痛が出現しました。
来院時には上咽頭炎による咳嗽も続いており、腰部痛に加えて、咳込みによる身体への負担も考慮する必要がある状態でした。
3.施術方針
座位での仕事による長時間の同一姿勢などから、股関節周囲の可動性が低下していた可能性があると考えました。
また、上咽頭炎に伴う咳嗽が継続したことで背部筋群の緊張が高まり、胸椎の可動性が低下したことによって、腰部への負担が増加した可能性があると考えました。
そのため、腰部だけにアプローチするのではなく、胸椎および股関節周囲の可動性向上を図るとともに、疼痛によって生じている防御性収縮の緩和を目的として施術を行う方針としました。
4.施術内容
頸部、背部、腰部、臀部、股関節、大腿部を中心に、各部位のトリガーポイントに対する施術を行いました。
初回は疼痛が強く、体位変換も困難な状態でした。そのため、無理に体位を変更することは避け、実施可能な体位を選択して施術を行いました。
施術中もその都度、疼痛や身体の状態を確認しながら刺激量や施術部位を調整し、安全性を優先して施術を進めました。
5.セルフケア指導
自宅でのセルフケアとして、ストレッチポールを使用した背部のコンディショニングを指導しました。
無理に腰部を動かすのではなく、背部を中心に身体の緊張を緩和し、胸椎周囲の動きやすさを維持することを目的としました。
6.施術経過
計4回の施術を行いました。
初回は腰部痛が強く、体位変換や腰部の動作確認にも制限がみられたため、状態を確認しながら施術を行いました。
その後も各回の来院時の状態を確認し、疼痛の程度や動作時の反応に合わせて施術内容を調整しました。
7.今後の方針
今後は、今回の腰部痛の経過を確認しながら、胸椎および股関節周囲の可動性改善、腰部周辺の過緊張の緩和を継続していきます。
また、腰部症状が落ち着いた段階で、併存している上咽頭炎についても状態を確認し、必要に応じて関連部位へのアプローチを検討していく予定です。
8.考察
本症例では、ライブでの長時間のスタンディング後に、くしゃみを契機として腰部痛が発症していました。以前から慢性的な腰部のだるさがあり、さらに座位中心の仕事による身体活動の制限や、上咽頭炎による咳嗽の継続など、複数の身体的負担が重なっていた可能性があると考えました。
初回来院時は疼痛に対する恐怖感が強く、腰部の動作確認や体位変換が困難でした。そのため、局所の状態を詳細に評価することよりも、まずは患者様の状態に合わせて安全に施術を行うことを優先しました。
また、腰部だけではなく、胸椎や股関節、臀部、大腿部など周辺部位にも着目して施術を行うことで、腰部への負担軽減と身体全体の動きやすさの改善を目指しました。
今後は症状の変化だけでなく、腰部の前屈・後屈・回旋などの動作、疼痛に対する恐怖感、日常生活動作の変化についても継続的に確認し、施術内容を調整していく必要があります。